哀しみの瞳


(秀一)
「由理は、今でも充分しあわせに暮らしているんですよ!由理の親だという自覚を何時持たれたのでしょうか?つい先日になって親だという気持ちに気付かれたような人に現実的に親だからと言って由理を預ける訳にはいかないと思うのですが!どうなんですか?」



(母 みち子)
「その通りです!秀一さんの言われることはもっともです!私が育てていく自信を失って、まごころ園に置き去りにしてしまった事がすべていけなかったのですから。私の方がすべて悪かったのです。」



(高橋)
「みち子をそこまで追い込んだのは、私なのです!私が無責任だったのです。……」



(秀)
「今このお二人をどうのこうの、言ったところで、始まらないだろう!これから由理がどうするかの方が先決だろう!」



(高橋)
「申し訳ありません!私どもが不甲斐なかった為に、吉川さん達に本当にご迷惑をお掛けしました。こちらの秀一さんにも、これ程までに、真剣に考えて頂いている由理は、しあわせ者だということが、つくづく分かりました!嬉しい限りです」



(みち子)
「これから先は、二人力を合わせて、今までしてやれなかった分、親として由理をしあわせにしてやろうと思っています。吉川さんっ、どうかどうか、由理を私どもに任せてもらえないでしょうか?」



(秀)
「私は、由理を本当の娘と思い育ててきたつもりです。けれど、ここで本当のご両親が出て来られた以上……ご両親の元へ、お返しするのが、一応の筋でしょう、と思っております。ご両親もどれ程悩まれた結果だと思いますので。」