哀しみの瞳

(理恵)
「秀一?ごめんね!突然にお父さんって言っても、びっくりしたわよね?今まで、お父さんの事何も言わなかったお母さんが悪かったのよね?でも、もうそんな風に思わないで頂戴!しっかりと、前向いて、お父さんに、秀一を見て貰って!…はいっっ」
そう言って、秀一を秀の方へ押しやる。


しぶしぶ、俺の前に来る。


「吉川 秀一です………」
何か言いたそうではあるが、後ろずさりしていく。



「俺は、吉川 秀(ひで)………
秀一は、お父さんの秀の字を取って、お母さんが名前付けたんだと思う!なっ?そうだろう?理恵!」
理恵は頷く。



「秀一は、俺とお母さんの、たった一人の大切な息子なんだよ!……
今までずっと、お母さんとお前を、放っておいたりして、ごめんな?」


秀一の瞳の奥は、まだ冷たいままだった。


そりゃそうだ!今まで、居ないと思ってた父親がいきなり現われたのだから、秀一にしてみれば、そう、易々て、あっそうですか。と受け入れられるはずが無いのだ。




重子が、気を利かせて、秀一を迎えに来てくれた。



(秀一)
「重ばあちゃん?由理を迎えに行こう?僕が由理の面倒ちゃんとするから、ご飯も食べさせてやるし、寝かせてもやれるから、お願いだよ!
ねぇ!お母さんからも言って?お母さんが居なくても、僕は、由理と居たいんだ!」



理恵が入院した事で、由理は、まごころ園でみることになっていた。



(理恵)
「そんな事言っても……おばあちゃんが、大変だから…」



(重子)
「分かってるよ!この子達の事は…理恵ちゃん!安心して!しゅうちゃん!分かったよ!由理ちゃんは、連れて来ようね!まったく、この子は…由理ちゃんの事になるともうっ…さぁ!帰りましょ!理恵ちゃん、秀さんと、沢山話しするんだよ!」



(秀一)
「じゃあ、お母さん、またね?僕また来るからね?それと、由理の事は、僕に任せて!じゃあね!」



俺には、一言も言って行かなかった。