哀しみの瞳

秀は、理恵をそっと、そっと抱き締める。そうしないと、折れそうな位体はやせ細っていた。
秀も、声を押し殺すように、泣いていた。

理恵は、秀に抱かれ、泣き続けたまま、疲れたのか、そのまま、また眠りについてしまった。頬につたう涙をきれいに拭いてやり、秀は、ベットの側で、かがみ込んでしまった。


小林の言った言葉が、頭の中を駆け巡る。



理恵の命は、後10日…………何てことだ!!!!




一晩中眠れないまま、秀は朝を迎えた。
洗面所へ行き、顔を洗い、身なりを整え、病棟の看護婦の元へ行き、軽く事情を話し、付き添いを許可して貰う書類を書いて提出しておいた。


病室に戻ると、中から誰かの声がしていた。


秀が入って来た途端にその女性達は、振り返り秀を見た。


(嶋田園長)「あらっ?どちら様でしょうか?………あああっ!」



(重子)
「貴方は…もしかして……しゅうちゃんの?……ええっ!」二人共、先の言葉がでてこない様子。



(秀)
「ああっ、初めまして!私、吉川 秀(ひで)と言います。突然でびっくりされたでしょう。昨日、本田剛君に此処まで連れて来てもらいました!今まで本当に理恵の事………」



(重子)
「しゅうちゃんのお父さんでしょ?理恵ちゃんの……そうっっ、だって、見てぇ!園長先生…この人、しゅうちゃんにそっくりだもの!じゃなくて、しゅうちゃんが、この人に似てるんだわ!」



(園長)
「本当に!こんなにも親子って、似るものなのかしら?びっくりしたわよね?自己紹介されるまでも無いくらい!へぇぇぇっ」


(重子)
「遅れちゃいましたけど、私は、剛の祖母の、和田重子と言います」


(園長)
「はい!私は、理恵さんが働いている、まごころ園の園長をしております嶋田洋子と言います」


改まり二人は立ち上がり、礼をしてくれた。