哀しみの瞳

(剛)
「先生!吉川どうなんですか?」



(小林)
「……もう、我々医師の力では、どうする事も出来ない。」



(剛)
「もう手遅れって事ですか?薬の治療とか、何か手立てとか無いんですか?」



(小林)
「だから、あの時、あれだけ、入院して、きちん調べて、治療しようと言ったのに!彼女は、まったく聞いてはくれなかった。今の生活を大切にしたいって…何をどう言っても、訊かなかった。」


(剛)
「やっぱり…そうだったんですか?俺からも、言ったんですけど。全然訊かなくて。きっと、あいつは、誰の言う事も訊かなかったと思いますよ………ある一人を除いては…」

…はっっ!今になってあいつの事、思いだすなんて…バカな…もっと早くに、あいつの存在を思い出してたら…俺はー――


(小林)
「ある一人とは…もしかして、彼女の?…」



(剛 )
「そう!あいつのただ一人…愛する人…秀一の父親ですよ!」



(小林)
「君っ!その男!いやっ、その人を、ここに、連れて来てくれないか?彼女に最後に会わせてやるんだ!それも、一刻も早く、そうでないと、間に合わないぞ!」



(剛)
「えええっ、そんなに、吉川は、悪いんですか?…分かりました!何とか必ず連れてきますから!それまで先生宜しくお願いします!」