「なーーおちゃんっ♪」
と、私の名前を呼ぶ声がしたような…してないような。
今の私は悶々とした頭の中を整理するのが精一杯だった。
「出た。中川。今はやめときな」
友美がさっきよりも呆れた声で言う。
中川は隣のクラスの男子。
まぁ、中川もヤンキーの部類。
なぜか、私に絡んでくるのだ。
「え、何。何か問題あり?」
中川の声が近くに聞こえたけど私の視線は変わらず窓の向こうだった。
葵先輩は友達に引きとめられてまだ中に入らず取り込み中。
だから、こうやって眺める時間も延びて私的にはラッキーだったり。
「…どうして、こんなにかっこいいのかな」
「えっ?俺?」
私の言葉に何を勘違いしたのかそう興奮気味に言う中川を、友美が教科書で叩いた音がした。

