右半身が麻痺してるから、
携帯もうまく使えない。
だから、葵や友美からのメールも
すぐには返せないんだ。
葵ったらそれを分かってるのに
『返事おせーよ』とか言ってくる。
本当、性格曲がってるよ。
「私、お手洗い行ってくるね」
この時間に行くのは決めてたこと。
麻痺して動きにくくてでも、車椅子は
まだ使いたくなかったから
早め早めに動いているんだ。
「おう、大丈夫か?」
葵が立ち上がって支えようと
してくれるけど、私は
「大丈夫」
と、言って一人で立って壁を伝いながら
ゆっくり、ゆっくり歩いた。
自分で出来るうちは
人の手はかりないと決めていた。
でも、これはかなりの運動量なのだ。
右半身を支えながら歩くのは
思っていたよりきつい。
トイレに続く道をゆっくりゆっくり
歩く。
トイレは病室からはそれほど
遠くはなかった。
グラッ…
「あっ…」
思わずバランスを崩してしまい
その場に倒れてしまう。
「いたた…」
手すりに手を伸ばし、
力を込めて立ち上がろうとする。
…が、立ち上がれなくて。
「やだ…」
こんなに力なかったっけ…。
何度も何度も力を込めたけど
立ち上がれなかった。
どうしよう…
動けない。
運悪く看護師も誰も通っていなかった。

