私は足を止めて、俯いた。
行きたいって思った。
でも、いざ来ると怖い。
「奈央、会えなくなるかもしれないんでしょ?今日が最後のチャンスになるかもしれないのにこのまま逃げるの?」
友美の、『逃げるの?』という言葉が
胸に突き刺さった。
逃げない。
そう決意したじゃない。
強く、なるんだ。
一目見れたらいいから…
私は頷いて、足を一歩一歩踏み出した。
中に入るとすでに数え切れないくらいの人がいた。
女の子の黄色い声援が聞こえたと
思ったら、ステージの中央に人影が見えた。
遠目から見てもわかった。
「葵…」
マイクを片手に、
すっごいめんどくさそうにしてる葵。
メロディーが流れ出して、
会場は一気に静まる。
ドキドキ…
ダメ…
まだ今からなのに泣いちゃう…。
葵はマイクを口に近づけ、
歌い始めた。

