ヤンキーな彼にベタ惚れ。






「…奈央、この夏休み旅行行こうか」



お父さんがそんな事を言ったのは、
私が癌だと宣告されてから
一週間後の事だった。




私が中学生になったころから
行かなくなっていた家族旅行。
高校一年生になって、久しぶりに行くということ。


きっと、思い出作りに行こうって
思ったんだよね。
それが最後かもしれないから。



「うん、行きたい」



私も行きたいよ、旅行。
お母さんとお父さんと私で。




「いいわね、どこに行く?」



「北海道なんてどうだ?あそこ空気が綺麗だろう?」


北海道って…



「大丈夫なの?お金かかるじゃん」


私たち特別お金持ちでもないし
突然決まったのにいきなり北海道なんて
大丈夫なの?



「こら、子供が親のふところ心配するんじゃない」


お父さんの言葉に笑ってしまう。
そら、そうだね。






「でも、北海道なんて遠すぎるわ…もう少し近めにしましょう」




"奈央にいつ何があるか分からないんだから"




きっと、お母さんはそう言いたいんだと思う。





「…ああ、まぁそうだな。うん、そうだ」




少しだけ、ほんの少しだけ残念だなって思ったけど旅行ってだけでうきうきした。








そして、今日。
火曜日はみんなで海に行く日。

お母さんには何度も念を押された。


「少しでも辛くなったら、休んで電話しなさいよ。後、耐えられなくなれば友美ちゃんや彼氏さんに話しなさい」


何度も何度も言ってくるから、
私も何度も同じように答えた。


「わかってる」


いつ何があるか分からない自分の体は自分が一番わかってる。