課題を開いてシャーペンを片手にカリカリと書き始める。
なんだかさっきから、あの男の子のことが頭から離れなくて。
あんまり集中できなかった。
あー…、ちょっと休憩しよ…。全然進んでないけど……。
シャーペンをペンケースに戻してヘッドフォンを耳へと装着。
最初からパソコンはついてるから、キーボードをカタカタっと叩いて好きな音楽を検索する。
しばらくしてからヘッドフォンから曲が流れ出したので、新しいタブを開いて新たなサイトへと移動。
あたしが最近はまっている、自分のアバターを自由に動かせるチャットもできるサイト。
なかなかアバターの種類が豊富で、あたしはまだまだ初心者だし簡単なものにした。
犬がベースのアバター。
耳が垂れてて、毛はうすい茶色。
意外と気に入ってるから、頻繁に利用している。
ピコン、と一通の通知が入る。
【KAZUKIがお部屋に入ってきました】
「KAZUKI」、なんて名前は見たことない。
多分フレンドじゃない人だと思う。
ピンとたってる猫耳のアバター。猫がベースというわけではなさそうで。
『こんにちは!』
あたしのアバターにそう言わせてみる。
『…あんたさ、』
返事が返ってくるのがはやい。
『さっき覗いたでしょ?』
すぐに次のメッセージが表示されて、どんだけタイピングはやいんだよ、と心の中でツッコミを入れる。
あたしはそんなにタイピングが得意じゃないし。
…でも、驚くところはそこだけじゃなかった。
『え? なんの話?』
覗きなんてしたことがないのに、犯人にしたて上げられているのだ。
これは反論するしかない。
『だーかーらー、さっき』
『さっき…?』
そんなに最近なの……?
徐々に不安になってきた瞬間、ヘッドフォンから流れる音楽が終わった。
なんでこんなときに…。
軽く涙目になりかけていたとき、ピコンと通知音が鳴った。
『部屋にいる僕のこと、覗いたじゃん』
でもそれは。
「部屋にいる僕のこと、覗いたじゃん」
―――通知音だけじゃなくて、真後ろからそう声と共に聞こえたものだった。
