主人公side







「……ッは~! 涼しい……。」







あたし、寺野葵(てらのあおい)は、夏休みに入って何度目かのネットカフェに来ていた。






現在、中三の夏。







受験生だから、こんなことをしている暇もないわけだけれども、エアコンの効いてない部屋にいるのは少々…いや、大分窮屈だった。







だから、夏休みに出された課題をカバンに詰めてこうしてネットカフェへと足を運んでいた。







ここならエアコンも効いているし、他の声に邪魔されることもない。







音声チャットをする人は此処では珍しいから。







それ以外の人は基本的にヘッドフォンをすることになっている。






でもそれは決まり的なものじゃなくて、暗黙の了解とかそんな感じ。





だからあたしも、課題をやってる途中に休憩するときは、ネットカフェ本来の使い方というかパソコンを使用しヘッドフォンを耳につけている。







しばらくはちゃんと、勉強するけどね。







此処に通い続けて既に一週間が経過している。





すっかり会員カードまでも作成しており、受付の人から渡された部屋番号の紙に目を落としてその部屋の方向へと歩き始める。








このネットカフェは、部屋を仕切る壁がそれほど高くない。





あたしもそんなに身長が高いほうではないのに、そんなあたしと同じくらいの背丈なのだ。






…ただ、目の部分から上だけは壁より高いから、ちらっとだけど部屋の人を覗くことができるけど。