「あっ」
時計塔の下。
確かに佳津の姿を確認できた。
お昼と格好は変わっていないけれど、
初めて遠くから見たせいかまるで別人のような雰囲気を纏っていた。
――うわぁ、やっぱかっこいいなぁ……。
思わずその場で見惚れてしまう。
駄目駄目、折角待っててくれてるんだからはやく行ってあげないと。
そう思って一歩踏み出そうとしたとき、全身の動きが止まった。
――あるひとりの声で。
「あれ、寺野?」
どくんっと心臓が跳ねる。
指先が震える。
振り向かなくても、その相手が分かる。
…けれども、振り向かずにはいられなかった。
「あれ、その着物去年ぶりじゃん! 相変わらず似合ってるー」
