「…約束は約束」



眉間にシワを寄せてキッパリと言ってくる。



「無理無理無理、無理だってば!…ほら!…ここ公園だし!」



「昨日もしたじゃねぇか」



いやいやいやっ!!

そういう問題じゃなくて!



私は堪えず首を横に振り続ける。



「・・・・」




全力で拒否している私に観念したのか、日向くんは少しの沈黙の後、大きく息を吐いた。



「分かった」



ムスっと口を尖らせる日向くんと対照的に、私は心の中でガッツポーズ。



「じゃあ今日はコレで我慢」




「え?」




急に立ち上がった日向くんは、私の手を取って 同じように立たせた。



冷たい空気が痺れるほど皮膚に刺さる。



そして、ほとんどの暗闇の中
包まれる暖かいものに、私は硬直した。



日向くんの頭が私の肩に乗っている。



「(わわっ……!)」




私の耳元で、日向くんが掠れた声で言った。



「たぶん…」



え?



「小夏が思ってるよりずっと、俺はお前が好きだから」



「日向くん…」




「だからあんまりああいうコトすんな」




“ああいうコト”っていうのはきっと、今日の放課後の事だ。



ここまで言われてしまうと、やってしまった事を後悔した。



私を締め付ける腕の力は、いつもより倍以上強い。



そのことが、私の心臓をきゅうっと締め付けた。




“ごめんね”の気持ちを込めて私の手に、更に力が加わる。



「……日向くん。___好きだよ」



「………………知ってる」




ボソっと呟いた声と一緒に、息ができなくなるほど抱き締められた。



「ちょ、苦しい…!」



「お仕置き」



ぜんっぜん意味わかんない……!!!



くははっ、と日向くんが笑って、その振動で体が揺れる。



締め付けてくる腕を、バシバシと叩いて反抗すれば、日向くんはすんなり私を離してくれた。



「さ、 帰るか」



何事もなかったかのような彼に、私はムスッと頬を膨らましつつも、伸ばしてきた彼の手に指を絡ませた。





成功か、成功しなかったのか
よくわらないけど


ひとつだけ分かったことは、
私は自惚れてしまうほど日向くんに愛されているってこと。


そして、どんなに辛くても
少し強引な彼の腕に心臓の音を大きくしながら、単純にときめいてしまうのだ。