な、なんか思ったより変な終わり方しちゃった……



“良く喋る人”っていう風に捉えられてしまったらどうしよう。



「(やっぱり人と話すのって体力使うな……)」




ヤキモチ焼かせるとかそれ以前に、南田くんと話すのに集中してまったく周りを見ていなかった。



自分のノートと胸に抱えて自分の席へ向かい、机の中へと押し込む。



ふと周りを見回すと、私と日直の人以外誰もいない。



「あ、あれ!?」




日向くんが居ない。




もしかして見てなかったとか…!?



私の中に嫌な予感が過る。



もしそうだとしたら、さっきの時間がすべて水の泡だ。



「(今日も一緒に帰る約束してたのに…)」



先に帰っちゃったのかな…



重たいカバンを片手に、玄関に向かう。


みんな新人戦が近いから、授業が終わればすぐ部活に行ってしまう。


だから校内には、生徒がほとんど残っていない。



今日はいつもより早く学校が終わっているから、みんなすばやく帰ってしまった。



玄関に着き、下駄箱から靴を取り出す。




「おせぇ」



「わぁっ!」



突然聞こえたその声に、自分でもびっくりするくらい大声を出してしまった。



「日向くん…!」



「帰ったのかと思った」と言うと、彼は何も答えずにそっぽを向いた。



「ごめん、遅くなって。帰ろ?」



私の声に、日向くんはニヤリと笑った。



ア、アレ……?



声をかけようとした直後に
トン、と顔のすぐ横に日向くんの手が置かれた。


下駄箱に追いやられてしまった私は、何が怒ってるのか理解できず、無言でカバンを握りしめる。



「何してたんだ?」



「勉強…教えてもらってた…けど」



「ふぅん」


そう言った、日向くんの声に
ぞわりとした悪寒が背中を駆けた。



日向くん、おこってる……?



これは作戦の効果が出ているってことだよね?



そう、喜ぶはずだったのに。





「お前、ヤキモチ焼かせようとしてただろ?」




ば、ばれてた……………




やっぱり日向くん相手にそんな作戦、無理だったんだよ!!




「南田と話してるとこ俺に見せて、嫉妬させる作戦だろ?」




う………



何から何までもお見通しだ。




「良かったな、大成功で」





へ?




「____んッ




突然、日向くんから噛み付くようにキスされた。



私の肺にあった空気は行き場を失う。



「ちょ、日向く……!」



ここ、玄関なのに…!



「見られるっ…から…」



呼吸を整えながら、腕で日向くんを抑える。



耳が、熱い。



「嫉妬してほしかったんじゃねぇの?」



「俺してるんだけど」と、顔色ひとつ変えずに彼は言う。



「そう…だけど…!」



でも、こんなとこで…__



「耳まで赤い」



私の腕を押しのけて、日向くんは耳にキスを落とす。



「やっ…はずかし…」


ダメだ。
こんなのずるい。


私は堪えられず、手で顔を隠す。



「可愛い。煽ってる?それ」



「ちがっ…う!…やだッ」




よりによってなんで此処なんだ…!!!


そりゃあ、私が悪いけど…


だけど、こんな公共の場で…!!



「止めてやるから、後て俺の要求ひとつ聞いてくれる?」



「わ、わかったから…!」