その時あたしは、一瞬だけ心臓が止まるのを
身体で感じた。
先生にケータイを見つかってしまった時のような、緊張感。
いや、きっと
それ以上だと思う。
身体の内蔵がフワフワした。
「ゆう……や…、」
訳が分からない。
ただそれだけ。
呼吸が止まって、
酸素が送られなくなった脳は、機能を失う。
目の前が真っ白になった。
『今まで、ほんとごめん。まさかあんな形になるとは思ってなくて』
何を言ってるの?
『彼女とはちゃんと別れて縁切る。絶対もう浮気なんてしねぇから、…だからさ、俺にもう一回チャンスをくれ』
ちゃんと別れる、って
貴方の彼女だったのはあたしでしょう?
今更そうやって、すがりついてくるの?
あたしは、毎日怖くてしかたがなかったっていうのに。
『ヨリ戻そう?』
違う。
違う、
そんなこと言ってほしいわけじゃない。
あたしはもう____
「…今更もう、遅い」
『本当に悪いと思ってる、マジでゴメンだから__
「やめてよ!…なんでっ…なんでそんなこと言うの…!あたしは…ッ__ 」
あたしはっ…
もう、
ちゃんと
忘れたっていうのに。
辛かった
悲しかった
悔しかったけど、
もうそれ以上泣いてなんていたくなかったから、
忘れて、
今まで以上に頑張っていこうって
思って
忘れたのに…____
「やめてよ…ッ」
か細い声が喉を通して出ると、
あたしは裕也の声も聞かずに、電話を切った。
泣きそうになりながら。
こんなことで
涙なんて流したくないのに。
地面にしゃがみ込んだあたしは、ボロボロになった自分の事と、今この時間もあたしのことを待っている高崎のことを考えて、
『ごめん、今日は行けない』
そう送った。


