“日向くんに、こっち向いて欲しくて。”
なんて、
言えない。
「なに?」
言葉に詰まる私に、日向くんはもう一押し。
「なっ、なにもないよ…」
嘘だけど。
…だって、そんなコト言えるわけないじゃん。
「ふーん」
興味なさそうな返事とともに彼は続ける。
「元気そうだな」
「おかげさまで…」
日向くんは、保健室でのことを覚えているのだろうか。
覚えていないわけ、ないよね。
私が覚えているんだもん…
じゃあどうしてこんなにも平気な顔して、いられるのかな。
恥ずかしくて、まともに顔を見れないのは私だけ?
「あっ、そういえば携帯…。後で返すね」
「あぁ、後で俺のカバンに入れといて」
「…何処か行くの?」
「サボり」
そっか…って、ダメじゃん!
でも、日向くんなら授業ひとつくらい休んでも、担任はなにも言わないだろうし。
しかもよりによって担任の授業、だし…
「一緒に来るか?」
「へ!?」
彼の上がった口角から、白い歯が覗く。
来るか…って、わたしが!?
いまの授業に着いて行くのがやっとの、私が!?
無理だよそんなの……
「ま、保健室か屋上にいるから」
「屋上って……鍵空いてなかったはずじゃ…」
「前いったら壊れてたんだよ」
こ、こわしたわけじゃないんだよね…?


