グルン。


あたしの視界が回転したかと思うと、ファビウスの顔が真正面にあった。


さっきまで彼を見下ろしていたはずだったのに、今度は逆に見下ろされている。




「……んっ」

かと思えば、すぐにあたしの唇は塞がれた。

キス、されているんだ。



仕事に行く時間だと抗議をしたいのに、ファビウスの傍にいたいっていうあたし自身の気持ちに負けてしまった。


あたしは彼の広い背中に腕を巻きつけた。



そして数時間後には約束の時間よりも遅れたのはなぜかと、取引先の主人から怒られるのは目に見えている。

そのときは一緒に謝ってあげよう。


あたしはそう決意して、ファビウスが与えてくれる甘い口づけに酔いしれた……。



*おまけEND*