ファビウスはすごく優しい。

そんな彼と一緒にいられるなんて、すごく幸せ。


涙がでそうになるくらい、今がすごく愛おしい。

そんな思いが心の中に広がってくる。


今を実感すればするほど幸せで、嬉しさのあまり、あたしはわざと大きな声を出した。


「ファビウス、今日は大事な取り引きがあるんでしょう?」

何回ファビウスを呼んだだろう。

なかなか起きてくれない主人を起こすため、あたしはフライパンやらお玉をナイトテーブルの上に置いて、彼を揺らす。

「お~い、ファビウス~」

こんなに揺らしてもまったく起きないなんて……。


はあっと長いため息をついて、いまだ眠っている彼を見下ろせば、あたしの視界に真っ先に飛び込んでくるのは朝日を浴びた象牙色の肌――。

サファイアの綺麗な瞳は、今は長いまつ毛で閉ざされている。



半分ひらいた薄い唇。

プラチナブロンドは絹のよう。


相変わらず、すごく綺麗……。