テーブルに置いてあった携帯を取り、メニューを開く。

部屋の中の唯一の光が眩しい。

ゴシック体の文字が歪んでよく見えない。

歪みは段々と滲み、それに耐えきれずに携帯を持つ手を下ろすとカーペットなのに大袈裟な音がした。

引き寄せられるように倒れ込むと、今度は頭を打った。

耳元で鳴る音はどこか遠くの軋みのように聞こえた。

鈍い痛みに吐いた息が熱かった。


横たわったままの呼吸が重い。

ひとつ息を吐くと背中を圧迫され、ふたつ息を吐くと身体の重量感が増す。

こんなに必死に呼吸をしているのに息苦しさは消えない。

携帯の液晶が眩しい。

やってられない。


平良が好きだと言っていたから飲み始めたウィスキー。

なんのブラックレーベルだっけ。

思い出すより近い距離なのに、確かめたくてもこの部屋は暗い。

それにきっと、もう字なんか読めたもんじゃない。

身体が熱い。

左腕の裂けた部分が静かな部屋の中で激しく脈動する。

なんだか眠たくなってきた。

吐き気もする。

早く眠ってしまいたい。