『…きらいにならないで…』


祈るように、縋った。


平良を通して視る世界は、脱皮した目で見るような濁りのない世界だった。

平良はいつでもわたしの世界の中心にいて、それが心地良くていつまでもそこにいてほしかった。


平良という軸が、わたしにとっては唯一の正しさで世間のズレからわたしを護ってくれていた。


彼の帰宅するという連絡を待ち続ける夜、ずっと思っていた。


平良がいてくれたら他にはなにもいらないから、どこにも行かないでほしい。

わたしといられる時間を、ほかの人で消費してほしくなかった。

わたしのいないところで、わたし以外の人と楽しそうに笑わないでほしかった。


このわたしの想いを、彼はどれひとつとして受け入れてはくれなかったけど。