彼の口からでた四季と言う名前にドキッとした。
彼はあまりわたしの名前を呼ばないから、いざ呼ばれると付き合いはじめのころみたいにときめいてしまうのだった。
『四季。声、あんま出すなよ』
そう言って組み敷かれたわたしの顔を覗き込んで、彼はわたしの身体に触れた。
セックスのとき、それまでが嘘のように彼はわたしの名前を呼ぶ。
何度も、何度も。
呪文みたいに。
そしてわざとかってくらい、わたしの好きなところばかり責める彼は、多分あまのじゃく。
聞こえるぞ。なんて耳元で言うけど、見返した顔はいつもの100倍は楽しそうな顔をしていた。
耳元でかけられ続ける魔法に、何度も目の前が真っ白になった。
やがて精魂尽き果て赦しを乞うわたしに、魔法使いの彼はお構いなしだった。
鬼畜ってやつだと思う。
彼の正体を垣間見た瞬間。
そう。わたしはこの日、魔法使いの鬼を見た。



