【完】両想い予備軍 ―みんな誰かに片思い―


「松葉杖だからって手は抜いてやれないが」

「先生こそ、怪我させたとかうじうじしないで本 気出さないと負けるから」

ポイッと松葉杖を捨てると、奏先輩はボールを 持ったままスタート位置に歩き出した。

「深雪先輩、奏先輩足っ」

「しょうがないじゃん。奏はあきちゃんの為にし てくれてるんだから。 あきちゃんは止めたら駄目だよ。――我慢して」

真っ赤な目でそう言うと、深雪先輩は松葉杖を 拾ってベンチに座ると、強く強く抱き締める。

「いっつも奏は一目惚れなの。馬鹿みたいにす ぐ、告白しちゃうの。辛いけど、奏がフラれて落 ち込むのも見たくない」

あっ……。

泣き出した深雪先輩を見て、やっと私は深雪先輩 の気持ちを理解できた。

本当に私は、回りが見えて居なかったんだ。

「頑張れ、奏っ」

ゴールを見つめる奏先輩には、深雪先輩の泣き顔 は見えていない。 明るい声しか届いてないんだ。

「あきちゃんも、ちゃんと向き合ってあげてね」