【完】両想い予備軍 ―みんな誰かに片思い―

「だって、いっつも目で追って、不安になって、 先輩を避けて、凛君の言葉や仕草であたふたし て……そんな息苦しい時間を毎日過ごすの、無理で す」

自分で言っていて、涙が出そうになって、何回も 何回も手で払った。

どんどん可愛くない私になっていって、 どんどん『先生』である凛君を邪魔してしまっ て、 昨日みたいに、言葉にもない台詞で凛君を怒らせ てしまうぐらいなら、

優しくないキスをするぐらいなら、

片思いのままでもいいのかもしれない。

「ふーん」

先輩は、否定も固定もしないまま、心を見透かす かのような私を見た。

「よっと」

壁にかけていた松葉杖を手に取ると、立ちあがっ て、端の方でモップを手に準備していた一年にグ ルグルと手を振った。

「ゴール、ゴール用意してくんない?」

そう言われて、一年生が、一人二階に上って、畳 んでいたバスケゴールを機械を回しながら開けて 行く。