「あき、顔ぶさいくー」
「パンパンだねぇ」

科学室への移動中、朝からずっと聞きたそうにし ていた話題に触れられた。

お風呂でわんわん泣いて、ご飯をもりもり食べ て、 夜は全く眠れなくて、ソリティアと太鼓の達人と 猫つみゲームをしていたら朝を迎えてしまったん だ。

で、朝日に溶けそうになりながらもジョギングに 行くと見せかけて、凛くんの家に向かったら、既 に車が無かったんだもん。

朝練なら良いんだけど、避けられてるんなら死ね る。

「ゲームに夢中になってオールしたから」

「ふっふー。どーせ例の凛くん先生でしょーが」

「悩むぐらいなら同じ部活になって、離れないべ きだよー」

友のアドバイスを耳から耳に流しながら、渡り廊 下から隣の校舎の二階に目をやってしまった。

ちょうど、段ボールを持って歩いている凛くんが 見える。

真っ直ぐ前を向いているから、下から私が見てい るなんて気づいていない。

「両思いだからって、相手の気持ちが手に入るわ けでも、全て私のものになるワケでもないんだよ ね」

その現実が、二階にいる凛くんと渡り廊下から見 上げる私の距離によく似ていた。