「頭、冷やしてくる」
イライラした凛君は、そのまま階段を下りて、玄関に向かった。
「なぁに? ケンカー?」
キッチンからお母さんが顔を覗かせて凛君を呼びとめると、凛君は立ち止まらずに帰って行った。
「ごめん。おばさん、今日は帰るから」
そう言い残して。
「珍しいわね、あんたたちがケンカなんて。あきは早くおりてらっしゃいよー」
もちろん、こんなグシャグシャな顔で降りれるわけもなく、
代わりにお風呂に先に入って、泣いた。
両思いなのに、すれ違ったり、些細なことで喧嘩しちゃったり。
――片思いの時の方がわくわく、じれじれして楽しかったな、って思う。
今回は、私の軽はずみな発言のせいだから、ちゃんと謝りたいけど。
怒った凛君は怖いから、不安になる。
そのまま、嫌いになんてならないよね?