「お、かえり、凛くん」
「ああ」
「今日のご飯何だろうね」
当たり障りない会話をしながらも、凛くんは一歩も壁から動こうとしない。
じっと、眼鏡の奥から私を見下ろしている。
「い、いつから聞いてたの?」
恐る恐る尋ねると、じりっと凛くんの肩が壁を擦った。
「『嘘ですよ』当たりから」
ほぼ、ぜ、全部じゃないかー!!
一体いつの間に瞬間移動したんだろう!?
ずっと窓から凛くんの車を待ってたのに、たった一瞬、携帯に集中したせいで気づかないなんて。
「その、奏先輩は」
「お前、ちょっと黙れ」
「んっ!?」
一瞬だった。
凛くんが首を少し傾けて、私の肩を壁に貼り付けると、
私の知らないような、荒々しいキスをしてきた。
目を見開いて、目な前の凛くんの顔を凝視する。
――怖い。
「ふっ」
大人のキスをしようとする凛くんの舌を歯で防ぐ。
息を鼻でするしかなくて。
荒々しい互いの熱い息が廊下に漏れていく。
し、下でお母さん達が待っているのに!



