【完】両想い予備軍 ―みんな誰かに片思い―


デリカシーのかけらもない凛君に、抱きついた……いや、しがみついた。
今度は引き剥がされないように、ぎゅうっと強く。

「本音を言わない凛君の口なんて、縫い付けてしまいたい」

「言わないわけじゃない。言えない事も大人になれば出て来るんだよ」

凛君の小言がうるさかったので、一瞬だけ唇をかすめてみる。
案の定、ぴたりとしゃべるのをやめてくれた。



「もういい。今だけは、大人じゃない凛君がいい」

「――俺も」

そう言って、凛君は私を恐る恐る抱きしめた。


「今だけは、大人やめよっかな」

そう寂しく笑って、私の髪を撫でてくれた。

そして、ゆっくり唇をなぞると、そのままその指で頬に触れてくる。


凛君なら、触れて良い場所ばかりなのに。

凛君になら、全て触れて欲しいのに。

少しだけ唇が触れるキス。じゃれるだけの、子どもにキス。

――本音を隠した、短いキス。


凛君、寂しいよ。

悩んでいる事、全て教えて、一緒に考えようよ。

一人で何でも決めないでさ。