奏人先輩は、凛君の背中に背負われながらも、泣いている一年生や、バレー部の子に笑顔で話しかけて、フォローを忘れなかった。
そんな健気な姿もきっと、真面目な凛君には辛いと思う。
――傍にいてあげたいのに。
私は、学校ではそれもできない。
「はい。眼鏡」
職員室から眼鏡を持って、駐車場のエクストレイルまで駆け寄った。
「あき」
「!?」
遠くから深雪先輩が走って来てるのに、車には、……先輩だって乗っているのに。
「遅くなるから、俺が会いにいく」
「うん」
「――待ってて」
「私も乗ります!」
凛君のその囁くような言葉は、深雪先輩の叫び声にかき消された。
ちょっとだけ、変。
公私混合を嫌う凛君が、学校で名前を呼ぶなんて。
車が消えてからも、心に残る小さな不安が残る。
ちょっとだけ、凛君の瞳が冷たかったのは気のせいだと、良いんだけど……。



