【完】両想い予備軍 ―みんな誰かに片思い―




「捻挫、かな?」

「いって!! まじで痛ッ」

「うーん。病院に連れて行きましょうか」

「私、荷物準備します。奏のお母さんに保険証もっ」

先生や深雪先輩が動く中、凛君は棒立ちで動かない。

「すいません。俺が交代時間に余裕を持たせなかったから」

そうバスケ部の顧問に頭を深々と下げて、奏先輩にも頭を下げた。


「違うよ。先生は関係ないじゃん」

「そうですよ。一年はまだまだ落ち着きがないですし」



真面目な凛君の顔は、晴れなかった。

きっと、自分を責めて責めて、追いつめているんだ。

「俺が、病院に連れて行きますんで。ごめん、それでいいか? 新道」

先生は蹲って背中を奏先輩に向けると、そう言った。

「ん。ありがとーございます」
ちょっと照れくさそうに背中に負ぶさると、私を見てウインクする。


「七瀬(ななせ)。職員室から眼鏡を持ってきてもらえるか?」

「え、あ、うん!」

『はい』と即座に言えなかったが、この状況では、誰も不信には思っていないようだった。