【完】両想い予備軍 ―みんな誰かに片思い―



「あれ、君って西中のバスケ部キャプテンだった子だよね?」

適当に二人の話に合わせて歩いていたら、すれ違う瞬間、振りかえられてそう言われた。


「あ、……そうですけど?」

驚いて間を開けてしまったが、そう答えるとその声の人を見上げた。

「やっぱり。へぇ、この高校にきたんだ」

そう爽やかに笑う男の人に思わず見とれてしまった。

180センチはありそうなスラリとしたその男の人は、人懐っこい笑顔に、優しそうな薄茶色の瞳を輝かせ、
やや茶色く日焼けしたサラサラの髪を長い指先でかきあげ、


――こっちを穴が空くほど見つめてきている。

「よく私ってわかりましたね」

ってか、この人、誰なんだろう?

目立つしカッコいいし、私を知ってるみたいだけど、私は知らない。

緑色のジャージは確か、二年生だったよね?

「あは。たしかに。ショートカットで、もうちゃっと日に焼けてたよね。

――更に可愛くなったじゃん」

「へ?」

「新道(しんどう)センパーイ! ボールの準備できましたよー」

そう呼ばれ、その男は振り返った。
私たちと同じ青のジャージの男の子数人が、バスケのボール籠を持って手を振っている。

大方、スポーツ推薦で入って春休みから部活に参加している組だろう。