「もう少し、早く来て欲しかったな。今日は朝会議なんだ」
「そ、なんだ。じゃぁ、今日、家に行ってもいい?」
バクバクする心臓を抑えながら、どんどん真っ赤になる顔でじっと凛君を見つめた。
「――ああ。数学でも教えてやるよ」
負けた、と言わんばかりの苦笑した顔で、頭をくしゃくしやされる。
「ふふ。数学は、奏先輩のお陰でもう大丈夫だよ。じゃぁ凛君が部活終わるぐらいに窓から帰りを待っとくね」
くしゃくしゃ触った手をどけて、そう笑うと。ちょっとだけ凛君の目が冷たく光った気がした。
でも一瞬薄く開いた唇は、すぐに軟らかく笑って言葉を隠してしまう。
「連絡する」
優しくしたり、遠ざけたり、――言葉を飲み込まれたり。
好きになったら好きな人の、そんなことで一喜一憂してしまう。
なんて恋は面倒なんだろう。なんで幸せだけ、手元に残ってくれないんだろう。
なのに、伝えたのは、凛君も同じ気持ちになって欲しかった。
こんな片思いのようなままは嫌だよ。
――何度でも、ぶつかっていこう。
そう、凛君のエクストレイルを見送りながら強く思った。



