【完】両想い予備軍 ―みんな誰かに片思い―



坊主に近かった黒髪は、伸ばされてワックスでオシャレにねじっていたり、流してたり。
時々、爽やかな柑橘系の香水も付けるようになっていた。

バスケ少年だった凛君は、お兄ちゃんみたいにと隣に寄り添ってくれていたのに。
大学生になったら落ち着いて、色気づいて距離が遠のいた。

――でも、ウチの家に着くと髪を無造作に掻いて、だっさい眼鏡にかけ直したりして素を見せてくれるから気持ちはどんどん積もるばかりだった。


離れた凛君を忘れるために打ち込んだバスケが、私と凛君を繋げてくれた。

勉強だって、あんなにバスケに打ち込まなかったら教わることもなかったんだ。


『凛君のせいでバスケ、上手くなったんだよ。
凛君に私の気持ち、受け止めて欲しい。
受け止めてくれるまで、何回も何回もシュートするよ』


そう言って、ひらりとジャンプして3点シュートを決めた。

凛君は、無言で下がった眼鏡を指で押しあげる。
だからもう一度、ボールを拾ってジャンプした。

何回も、何回も。

汗が顎を伝うのを感じながらまた、ゴールに腕を上げた時だった。

『受験に合格したら、あきの願を叶えてあげるよ』