【完】両想い予備軍 ―みんな誰かに片思い―


桜咲く。
心躍る四月のはずが、全然心は晴れない。

漸く、受験勉強から解放されて、わくわくドキドキの高校生活、そして初めての恋人との甘い日々を夢見ていたのに。

今は、近場だからと安易に決めたこの学校が憎い。

「あき、あき、サッカー部の人がね、マネージャーしないかって! まじかっこよかったよ!」
「私は美術部かなぁ。繊細な油絵を描く先輩がいるんだよねぇ」

きゃっきゃっ可愛らしく浮かれている花音(かのん)は、高校デビューと言わんぐらいのパーマをピンクのシュシュで結び、大きめの体操服からちょこんと指を出して、女子力の高さをアピールしている。

美術部の話を朝からずっとしている柊(ひいらぎ)も、コンタクトに変えてからは切れ長の瞳とシュッとした綺麗な顔が目立ち、これまた美人で腹が立つ。

いや、この二人は中学の時から可愛かったけど。

それに一番変ったのは私だと思うし。

ぞろぞろと更衣室から一年がグラウンドへ出てくる。

今日は一時間目から二限目まで、一年生の為に部活紹介があるらしく、体操服に着替えてグラウンドに全校生徒が集まることなっている。