【完】両想い予備軍 ―みんな誰かに片思い―

「あき」

伸ばされた手。 辛そうな凛君の顔。 バタン。

風の強さに負けて、ドアが閉まった。

コピー機の機械音に、カーテンがなびく暗くなり 始めた進路指導室。

「泣かせたくないから、言ってるんだぞ」

涙をゴシゴシとスーツの袖で拭いてくれた。 それが、凛君の匂いがして、安心してまた、ポロ ポロ泣けてくる。

「キスじゃなくていい。安心する言葉をちょうだ い」

不安。不安なの。 大人な顔して、平気な顔して、私と目も合わせな いのが。 家じゃ、あんなに優しいのに。

「言うよ。言える。けど、あきが選んで」

ガ―ッとやっと最後のプリントが印刷から終わ り、ポトリと落ちてくる。 それが、合図のように凛君は私から離れる。

――本音をくれたのは本当に一瞬だけだった。

具体的な言葉は貰ってないけど。

「今日、家に行くから」

そう小声で耳元で囁かれて、慌てて何度も何度も 頷いた。