【完】両想い予備軍 ―みんな誰かに片思い―


柊は、夏にあるコンクールに向けて作品を作り始めた。

テーマが凄く抽象的なんだと苦笑していた。


美術室に飾られている一枚の油絵は、柊が憧れていた先輩が描いた油絵らしい。


私には芸術の才能は全くないのだけれど、
月が照らす夜の海と、その海に浮かぶ舟が描かれているらしい。


なんちゃらなんちゃらと凄く長ったらしいコンクールで最優秀賞を録った有名な作品。


私には、青と黄色のペンキがひっくり返されたような、ベタベタ塗られただけの作品に見える。


けど、柊にはもっと違う絵として映っているんだと思う。



留学しちゃう先輩に見てもらうために、頑張って描いている。


意地悪で嫌なやつだと言っていた先輩は、
白くて儚げで、綺麗な人だった。

ただ、すらりと伸びた身長と指はごつごつしていて、男らしい部分もある。



いつも悲しそうに笑うから、ちょっと不思議な雰囲気だ。