「ちがっ ちがうの! 橘ぶちょ……」

私が言い終わる前に有沢さんが立ちあがり、私に ウインクする。

「橘さんは俺の教育係だったんだけど、俺が大分 に転勤と入れ替わりでみなみちゃんが就職して橘 さんが教育係に着いたんだよ。ややこしいで しょ?」

「えー! じゃあ、みなみ先生の上司だった人な んですね~。通りでみなみ先生が緊張してると 思った~」 呑気にそうクスクス笑う明美ちゃんが憎らし い……。

「明美ちゃんこそ合コン初めてなのに、なんで私 より緊張してないの!」

「えっ それは~」 ちらっと有沢さんを上目づかいで見つめると、有 沢さんは爽やかに笑う。

「――合コンが初めてとか初々しくて可愛いね」 「そそ、そんなこと」

真っ赤な明美ちゃんの恋をはらはら見守りつつ、 勇気を出して隣に座る。

「よお。びっくりした?」

「何にですか? 部長が福岡から来てからびっく りしてばっかりです」

そう言うとククっと楽しそうに笑われた。

「――運命かと思ったって言ったら笑う?」