恐る恐るバスからホテルの看板を見つめた。
『温泉ホテル TACHIBANA』
まさか??
「あれー? きょうはみやもとせんせいじゃない!」
「おはよう。真君」
気のせいだ。気のせい。
はやく挨拶して真君をバスに乗せよう。
「じゃぁ、帰りもバスで帰って来るんだぞ? 帰ったら遊ぼうな」
「うん。ぱぱもちゃんとおひげそるんだよー」
「ああ」
「……」
「じゃあ、蓮川。よろしくな」
ど、どうなってるの?
なんで真君が、橘部長を『パパ』って呼んでいるの!?
バスに乗り込んだ真くんは運転手さんにも挨拶すると指定席に座り、部長に手を振った。
部長も真君に手を振りながらも、私に小馬鹿にするような意味深な頬笑みを向ける。
えっ
部長、バツイチとか??
だから、昨日、ここら辺のファミレスとか知っていたのかな?
「ぱぱね、しばらくこっちいるんだって」
「そ、そうなんだ。いいねー」
嬉しそうな顔で話す真君には、何も聞けない。
――ちょっといろいろ聞くのが怖い。



