「しっかり捕まっててよー! 風ヤバいからー!」

大はしゃぎでそう言うと、バイクは別大道路に向けて一直線。

ちょっと緩やかなリアス式海岸を通り抜けながら、
ちょっぴり変わってしまった町並みが見えてくる。


小さい頃よく行っていた水族館は、うみたまごと名前が変わり、日曜の今日は駐車場に車が溢れている。


弟と学校で聞いた、別大道路の怖い話の名物地蔵を通過したが、いっぱい花束が添えられていても、もう怖くなんて無かった。



町並みも変わったけど、私も一番変わっている気がする。

こんな風に弟を抱き締めていなければ、あの日の事が蘇りそうで嫌になる。



「そーいや、車買うの?」

「えー?」


風がゴーゴー当たるので、侑哉の声がよく聞こえない。


「通勤に車ー!! 買うのー?」

「……そりゃーねぇ」

ここじゃあ、車が無いと生きていけない自信がある。