「ふふ。福岡から大分までそんなに早くは着かないよ」

ワンピースのファスナーを上げて、髪を編み込みピンで固定する。
後は化粧のみだから、再び電子レンジのボタンを押す。

「それまで腹ごしらえしますか」

私より慌ててくれる侑哉のおかげで少しだけ心に余裕ができた。
大丈夫。上司は福岡の人だもん。長居できないし、事情を説明したらきっと気まずくなって帰ってくれる。
仕事もそんなに出来なかった私を、上司が連れて帰るとうには思えないから。


今度こそ電子レンジからお弁当を取り出して、食べはじめた。
二回も温めたお弁当は、蓋が少し歪んでしまっていたが、中身は無事。

「……」

「……」

もし、さっき。
上司が電話をくれなかったら。
その電話を私がとらなかったら。
私と侑哉は、どうなってしまっていたんだろうか。