「すいません。タクシーお願いします」

侑哉にお水を飲ませながら苦笑しつつお願いすると、すぐに一階に下りて行く。

むにゃむにゃと酔っぱらう侑哉の頬を抓りつつ、晴々しい気持ちがするのは侑哉のおかげ。

元彼を『勘違い俺様とか我儘マザコン』と言ってくれたのは、侑哉。

それまでうじうじ悩んだり、自分が悪いんじゃないかと思いつめたりしていた私の心を、軽くしてくれた。


私が言えないような悪口を、代わりに言ってくれたから。


だから未練なんてない。

私も元彼達も、お互いを知らなかった為の事故みたいなものだ。


「あと十分で着くってよ」

「ありがとうございます」

「福岡から戻ってきたなら職はあるのかい? 困ったらウチは昼間、嫁さんがカフェしてるから頼りな」

そう豪快に笑う飛鳥さんは、こんな私でもそう言ってくれる世話好きの良い人なんだろう。

侑哉が慕うのも分かる気がする。