僕のいつになく真剣な表情に、惟はわざとパソコンの画面の方に目を移しながら、僕の話を聞いていた。
「うん。」
惟は変にシャイなところがあった。だから、真剣な話をしようとすると、ごまかしながらとか、そんな感じで話を聞く癖があった。その事をよく知っていた僕は、気にせずに話を続けた。
「俺、愛内さんの事好きなんだよ。」
「知ってるよ。何を今更、あらたまって言っているんだよ。」
惟の答え方は、完全に昨日までの、僕の気持ちの事を言っていた。
「違うんだよ。」
「何が違うんだよ?好きなんだろ?」
「あぁ、好きさ。でも、違うんだよ。その好きじゃないんだよ。」
あまりに要領を得ない話に、惟はパソコンを使う手を止め、ジッと僕の事を見た。
「秀郎の言っている事、訳わかんないんだけど。」
惟の顔は少し困惑していた。でも、それは僕も同じだった。
「だからさ、昨日までの愛内さんを好きって気持ちは、おでんが好きとかと同じって言うか・・・。ほら、セブンで買ってきたおでんの中に、ちくわぶ、俺の大好きなちくわぶがあるとするだろ。そのちくわぶを、惟に取られたりしたら、なんかムカつくだろ。そんな感じが、昨日までの俺の好きって事だったんだよ。」
惟はまだ困惑している。そんな表情を無視して、僕はそのまま話を続けた。
「でも、今の気持ちは違うんだよ。ちくわぶとか、そんなものとは比較できない、もっと、もっとすごい気持ち・・・なんて言うのかな・・・。」
そこまで言って、僕の言葉は止まってしまった。このあと、どんな言葉を続ければいいか、僕は心の中ではわかっていた。でも、その言葉を、口に出そうとすると、恥ずかしさから止まってしまうのだ。今も、心臓がドキドキしている。