来て早々に龍崎くんは
「わり。こないだ渡した記事のコピー今見せてくんね?」
と手を差し出してきた。
「記事?……ああ、こないだ図書館でコピーしたやつね」
それは朔羅が倒れた日、何故か図書館に呼び出されたあたしは龍崎くんから大した理由も聞かされず
『何十年も前に起きた水の事故のことを調べてほしい。
分かってるのは盛岡ってことだけで、年代と詳細な場所は不明だ』
なんて言われて調べたんだっけ。
盛岡って言えば…千里のおばさんの実家があるところで朔羅もこないだ気にしてた。
そこに一体何があるって言うんだろう。
気になって記事を一人で眺めたりもしたけれど、何せ大量過ぎてすぐに読むのが嫌になっちゃった。
あたしは隠すようにしまっておいた記事を引き出しの奥からひっぱり出した。
そう言えば…図書館の帰り道、バスケ部エースの田崎先輩に尾行されてて、さらにそれに気づいた龍崎くんの反撃であたしは記事を持ち帰らされたんだ。
その後ごたごたがあったみたいだけど、翌日朔羅とふつーに会ったし。昨日もふつーに元気そうだったし。
だから何があったのかこっちからは朔羅に聞かなかったけど。
でも……
「ねぇ……“あのとき”何があったの?」
龍崎くん、見たこともない怖い顔で電話に向かって怒鳴ってた。
朔羅に何かあったかと思ったけれど―――龍崎くんも今日はふつーだし…
あたしの質問に龍崎くんは一瞬だけ目を険しくさせて記事をぎゅっと握り―――
あたしは息を飲んだ。
聞いちゃ―――いけないことだったのかな…
けれど龍崎くんはちょっとの間を置いて口を開きかけた。



