「残暑見舞い。ど?具合は」
龍崎くんはカルピスソーダのペットボトルをあたしに手渡してきて、あたしのすぐ近くに勝手に腰を下ろす。
いいけどね、別に…でも一言「座る」って言ってもいいんじゃない??
完全に居座る気だな。
でも
「具合って??」
あたしが聞くと
「プチ鬱だ、とか言ってたじゃん。その具合」
龍崎くんは折り畳み式のテーブルに肘をついてのんびり聞いてくる。
心配……してくれてたんだ……
カルピスソーダのボトルをぎゅっと握ると、パキッ…小さな音がした。
まるであたしの心の音のように聞こえた。
響輔さんじゃなかったことにがっかり来てるあたし、サイテーだ。
「てかお前色白いな~
たまには外出て陽に当たった方がいいんじゃね?鬱は日光に当たるのがいいらしい」
龍崎くんが俯いたままのあたしを覗き込んでくる。
“らしい”って何よ、いい加減なんだから。
と思いつつも心配してくれて、嬉しかったり。
「……こ、これは元々だもん。あたし日焼けすると赤くなって終わりなの」
「そっかぁ、そりゃ大変だな」
龍崎くんは何が面白いのかくしゃり、と笑った。
人懐っこいその笑顔に―――
会いたくない、って思った自分が一瞬でも居たこと、それを恥ずかしく思った。



