「~♪」
鼻歌を歌いながら心が窓枠に座り脚を組んで、“家系図”なるものを満足そうに眺めている姿を見て速人は目を細めた。ラジオは激しいデスメタルからいつの間にか古い映画の音楽に変わっていた。
「お前の方がえげつないやないか」
速人が苦笑いで“浴槽”の中を覗きこむ。
出しっぱなしになっているシャワーの水滴が排水溝へと血を流しこむ。
「そうか?うちは“殺し”だけやなく、“クリーナー”でもあるさかい、
“仕事”は“最後”までしっかりせな、な
せやかて、“あの男”も何でこんなん今更必要なん?」
心は茶色く変色した薄い、玄蛇の家系図をヒラヒラさせて
「玄武もその家系図を大事に保管しとったけど、何の価値があるのか分からへんな。
ま、俺らは依頼されたことだけやればええねんけどな。深入りするのは面倒や。
しかし、まぁ殺し屋が殺し屋雇う日が来るとはね。世も末やわ」
速人が苦笑を漏らし、
「うちらの世界、広いようで狭いさかい、横の繋がりは大事や?
そうせな、食いっぱぐれるで」
と心は不敵に笑うと、浴槽を覗きこんでいた速人が底に落ちていた腕時計を拾い上げた。
「流石に“これ”までは酸で溶かしてくれへんかったか」
「ええもんもっとるな。質に入れるか?」
「阿呆、そんな足がつくことできるかい。これぐらいやったら大阪湾に沈めたってええやろ」
「せやな。早ぅ帰らんと。
あのクソガキ共と“あの男”が待っとるさかい」
心は封筒に“家系図”と名が付いた紙を仕舞いこみ、小さくため息をはいた。
「長居は無用やな。せやけどまだ仕事は残っとるで」
「ああ、戸籍謄本の方やな、あっちは楽そうやわ。
うちの演技でイチコロや」
「アカデミー賞ものの?まぁ程ほどに気ばりや」
速人の言葉に心は窓枠から飛び上がり、死体の“残っていない”部屋を堂々と横切り
「ほな、行こか」と速人を促した。



