廊下の壁にぴったりと背中を合わせ、監視カメラの死角の中そろりと非常口へ向かう。
「あれなら速人の“塗り替え”は必要あらへんね」と心は苦笑い。
「せやな、助かるけどな」と言い、すでに鉄骨が向き出しの階段を降りている。
「ほんま、せっかちな男やなぁ」と肩を竦めて心も階段を降りた。
ホテルと問題の“ヤクザの事務所”の間に、申し訳程度に点いている街灯に速人が銃口を向け、一発で街頭は壊れて光を無くした。
どんよりと暗い地面が地上に広がっている。
音はなく、勿論サイレンサー付きの銃なので発砲の音も聞こえない筈だ。
同じく音もなくその建物に忍び寄ると、通常なら来訪者を向かい入れるガラスの自動扉はなく、ただ重苦しい黒い扉だけが、まるで門番のように塞がっている。
インターホンの類はなく、扉の両側に忍び寄った……速人の方が軽く扉をノックした。
すぐに中から反応があった。
扉がゆっくりと外側に開いて、開いた扉の向こうでデスメタルの音楽が聞こえてきた。結構なボリューム音だ。
「響輔が喜びそうな選曲やな」と心が小声で言い、
「せやな。あいつあないな顔して結構激しいし」と速人は苦笑い。
組員の一人が「何事」か顏を出す。壁に張り着いていた心がその首めがけて銃のグリップの先で一発殴ると、男は声も挙げずにその場に崩れ落ちた。
倒れたその男の両脇に手を入れ、速人がずるずると引きずり、庭と思われる垣根に転がした。
「カズ?客か?」と、来客用の見張りで立たせていた男の異変に気づき、中から男が顔を出した。
心が壁から姿を現し
「ピザの配達や」と、言って音もなく発砲すると悲鳴を挙げることなく屈強な男は崩れた。ひっくり返ったその額に穴が開いていて、そこから血が流れている。
「すんまへん。配達ミスやったみたいや」
速人が言い、銃で倒れた男を跨ぐ。
「あんたでも冗談言うんやね」と心が笑い、
「そら言うわ」と速人が笑い返した。



