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二人がこのホテルを選んだワケは、隣接している建物が目当てだったからだ。
三階建ての、いかにも年代がいっていそうな古くて、暗い建物だった。壁にあちこちヒビが入っていて、あちこちにある小さな窓から頼りなげな蛍光灯の光が内部を照らし出している。
速人はボストンバッグからバラバラに解体したライフルを手際よく組み立て、その脇で心が細長い単眼鏡を取り出した。
遮光カーテンをそっと開け、その建物を単眼鏡で覗きこむ。
ライフルを組み立て終わった速人も、片膝を立てライフルを構え片目を瞑り、スコープ越しに覗きこんだ。
ライフルは改造してあって、赤外線のサーモグラフィーで熱感知ができるようになっている。
「面倒やで?アイツら武器もっとるわ」と速人が舌打ちして
「こっちもや。窓は小さぃし、正面入口の外に人はおらへんけど、“気軽に尋ねられる”雰囲気やあらへんな。
ライフルで仕留めんのは無理やな」
小さく吐息を付き、けれどすぐに笑みを浮かべた。
「けどラッキーなことにあん建物の前には監視カメラがついてない。
“ヤクザ”の事務所やのに」
「ヤクザの事務所や、からないか?でも建物内にはぎょうさん回ってるみたいやで」
「それはどうとでもなるやん。画像の塗り替え、あんた得意やろ?うちの演技より」
と、心はうっすら笑みを速人に向け、速人はちょっと笑った。
「さて、“どっち”から攻める?」と速人が目で聞いた。
「“こっち”の方がええんやない?夜になると組員が多なる。人数少ない今が狙い時やし楽や」
「せやな。あいつら何しとるか分かるか?」と速人が再び聞くと
「賭博やっとるで。麻雀や。ほんま任侠映画のまんまやな」と心が失笑を浮かべて
「ほな、狙いやすいな」と速人も口元に笑みを浮かべ、スコープから目を離すとゆっくり立ち上がった。



