降下してきたエレベーターに二人同時に乗り込み
「「………」」
二人同時に顔を見合わせた。
「てか、何なん?ハスカワって、それにそのクレジットカード」
「ああ、あの乗馬クラブのメンバーや。それよりお前の演技の方が突っ込みどころ満載や」
「名演技やろ?」と心はちょっと胸を張り「うち、アカデミー賞で主演女優賞取れると思わへん?」との問いに
「思わへん。あの響輔の女なら取れるかもしれへんけどな」
「ああ、あの女優のお嬢ちゃん?まだ響輔の女やあらへんよ?」
「何で分かるん?俺にはカップルに見えるけどな」
「女の勘や。てか、カード掏ったんかい。相変わらず手癖が悪いやっちゃなぁ」
心の言葉に速人はちょっとムっと口を尖らせ
「掏ったんちゃう。ちょっと失敬しただけや。あの男隙だらけやったからな。旅館の跡取りやけど温室育ちのボンやから、ありゃあかんわ、跡継いでもそうもたへんで。
それよりお前こそ何なん?ど田舎から来た言うて」
と反撃に出ると
「そうでも言わな怪しまれるやん。誰が好き好んでこんなボロホテル泊まる言うん?」
「せやな」速人は苦笑い。
受付嬢が言う通り、街中に行けばもっと高級なホテルやきれいなホテルはいくらでもあるが
敢えてこのホテルを選んだのにはワケがある。
ホテルの廊下の天井を見上げてどの位置に監視カメラがあるのかチェックして部屋に入ると、鍵をきっちり掛けてロックもした。速人と心は持ってきたボストンバッグをそれぞれ乱暴に床に落とし
「あの受付嬢が言うた言葉はきっちり守らんとな」心が意味深に笑い、膝を折りボストンバッグの中を探っていた速人がちょっと顔を上げ、同じように笑った。
「治安が悪い。あの言葉、ほんまやな。せやけどうちらが一番キケンっちゅうことは」と心は言い
「あの女には見抜けなかったようやな」と速人がにっと笑った。
「うちの名演技に騙されたんや、やっぱ主演女優賞取れるで」
「はいはい」と速人は心の台詞を軽く受け流し、
「「ほな、仕事するで」」
と揃って言うと、二人は立ち上がった。



