高速を180キロで飛ばしている最中、車のスピードとは反対に車内には緩やかなカーペンターズの歌声が響いていた。
「何やの、この選曲」速人が目を細める。
「ええやん。運転手の特権や。うち好きやねん、カーペンターズ」
「ふぅん」と速人は口の中で呟き、窓のサンに腕を乗せ流れる景色に目を向ける。
「カーペンターズって、噂あったやん」
「噂?……ああ、近親相姦ちゅう噂?」
「どこまでほんまか分からへんけどな」と速人はため息をつく。
「ええやん、どっちでも。歌がえよければ」
「そうやな……」
と口の中で呟いた言葉は、車のエンジン音にかき消された。
「―――うちらは
双子や」
心が無表情に言った。
「今更確認することでもあらへんやない?」
と速人は苦笑したが
「でもホンマは血ぃが繋がってないけどな」
心の言葉に速人は今度こそ口を噤んだ。
いや、事実二人の戸籍は同じ籍に入っている。“兄妹”と言う枠で。
「俺のおかんと、お前のおとん、それぞれが連れ子やったっちゅう話やけど、ホンマ出き過ぎやな。ほんまは俺のおかんとお前のおとん、結婚する前は交際しとったっちゅう話やけど、ほんまの所はよう分からん。
二人とも死んでもうたからな」
「でもDNA検査の結果、うちとあんたは血ぃが繋がってないことが証明されとるやろ?
あれこれ説明するのも面倒やし、双子ってことにしとるけど……」
「せやなぁ。この事実を知っとるんは、今は俺とお前だけや。誰も俺たちがホンマの兄妹やあらへんこと知らへん」
「何かと便利やろ?」心は笑ったが、その笑いは中途半端に言葉尻が消えた。
「この関係、近親相姦になるんかな」
速人は窓の外に顔を向けたまま、呟いた。
「戸籍上ではそうなるわな」
「なぁ、心。
白虎会と青龍会の盃の件がまとまったら
ここじゃないどかへ
行かへん?
孤島で町医者するのもええと思わへん?俺ら医師免許持っとるし」
そこなら、誰も俺たちが双子と言うこと、隠さなければいけない関係とは無縁や。
速人はそう続けた。
「せやなぁ。
夢みたいなことやけど、うちは
夢見てる」
あんたと二人、誰もうちらの関係を知らない場所で、二人で静かに暮らす。
ほんま、夢みたいや。



