。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。



高速を180キロで飛ばしている最中、車のスピードとは反対に車内には緩やかなカーペンターズの歌声が響いていた。


「何やの、この選曲」速人が目を細める。


「ええやん。運転手の特権や。うち好きやねん、カーペンターズ」


「ふぅん」と速人は口の中で呟き、窓のサンに腕を乗せ流れる景色に目を向ける。


「カーペンターズって、噂あったやん」


「噂?……ああ、近親相姦ちゅう噂?」


「どこまでほんまか分からへんけどな」と速人はため息をつく。


「ええやん、どっちでも。歌がえよければ」


「そうやな……」


と口の中で呟いた言葉は、車のエンジン音にかき消された。


「―――うちらは


双子や」


心が無表情に言った。


「今更確認することでもあらへんやない?」


と速人は苦笑したが


「でもホンマは血ぃが繋がってないけどな」


心の言葉に速人は今度こそ口を噤んだ。


いや、事実二人の戸籍は同じ籍に入っている。“兄妹”と言う枠で。


「俺のおかんと、お前のおとん、それぞれが連れ子やったっちゅう話やけど、ホンマ出き過ぎやな。ほんまは俺のおかんとお前のおとん、結婚する前は交際しとったっちゅう話やけど、ほんまの所はよう分からん。


二人とも死んでもうたからな」


「でもDNA検査の結果、うちとあんたは血ぃが繋がってないことが証明されとるやろ?


あれこれ説明するのも面倒やし、双子ってことにしとるけど……」


「せやなぁ。この事実を知っとるんは、今は俺とお前だけや。誰も俺たちがホンマの兄妹やあらへんこと知らへん」


「何かと便利やろ?」心は笑ったが、その笑いは中途半端に言葉尻が消えた。




「この関係、近親相姦になるんかな」




速人は窓の外に顔を向けたまま、呟いた。


「戸籍上ではそうなるわな」


「なぁ、心。


白虎会と青龍会の盃の件がまとまったら



ここじゃないどかへ


行かへん?



孤島で町医者するのもええと思わへん?俺ら医師免許持っとるし」


そこなら、誰も俺たちが双子と言うこと、隠さなければいけない関係とは無縁や。


速人はそう続けた。


「せやなぁ。


夢みたいなことやけど、うちは



夢見てる」



あんたと二人、誰もうちらの関係を知らない場所で、二人で静かに暮らす。


ほんま、夢みたいや。