そこから車で十分も満たないうちに到着したのは、今は使われていない廃工場だった。元は製紙会社のようで、大きな機械があちこちに点在してあるが、そのほとんどが錆びついている。
長い年月放置されていたのは、この建物自体が辺鄙な場所にあるのと、取り壊しに莫大な金が掛かることで、誰も譲り受ける者がいなかった、と言う理由がある。
しかし、心にとってその環境は、随分魅力的な“物件”だった。そう、ここは彼らの“アジト”の一つ。
従業員が営業に行く為の車庫があり、その前で車を停めて降り立つと
観音開きになっている鉄の扉を、心の方が両手でゆっくりと開けた。
軋んだ音を立ててぎこちなく扉は開く。
「“盛岡”に飛べて、玄武の縄張りやん」とノートPCを持ったままの速人が眉をしかめる。
「面倒やろ?だから“これ”が必要やと思うて」
心は車庫の中を目配せして、廃車になったまま放置されている車の一台、トランクを開けると中には大きな黒い……こちらはさび付いた工場とは違って真新しい箱のようなものが置いてあり、その蓋を開けると
中から黒光りする拳銃たちが底から目を光らせていた。
速人はその中から一丁の銃を取り出し、
「ふーん、ブロック18か。よぉ手に入ったな」
スライドを引くと、最初の弾薬が薬室(チェンバー)に送り込まれる感覚を掌で感じ取った。
「うちは色々顔が広いさかい、楽勝やわ。武器商人なんて全国どこでも散らかってるさかい」と心がにやりと笑い、
「せやなぁ」と、速人はのんびり呟き、持っていたノートPCの端を軽く宙にかざすと、ぱっと手を離した。
PCが地面に落ちる直前、ドン!と爆音が車庫に轟き、次の瞬間ノートPCは無惨にも壊れた。
言うまでもなく、引き金を引いたのは速人だ。
「ええやん」と満足そうに頷き
「やろ~?」と心も得意げだ。
拳銃の威力を確かめた速人が黒い箱のように見える鞄の蓋を下ろし、取っ手に手を掛けるとそれを持ち上げた。
「ほな、行こか」



