きっちりドアが閉まり、クラブの敷地を抜け出すところ
「「………」」
車中の二人は沈黙していたが
「ってか!何なん!!あの登場は!
クライアントって!俺、変な目ぇで見られたやん。
心!お前もっとまともな登場の仕方でけへんのか!」
と男の方が先に根を上げた。
女………心と呼ばれた方は嬉しそうに「うふふ」と笑い
「だって~普通に登場したらおもろないやろ?」
「おもろい、おもろないっちゅう話やないわ。心臓に悪いて」
速人と呼ばれた男がシートにズルズルと身を沈ませていると
「せやかて、あんたこそ乗馬クラブで何しとんの?あそこは金持のボンボンやお嬢ちゃんたちが集まる高級クラブやで?」
「………」
速人は黙り込み、代わりにハンドルを握っている心がしたり顔で
「あんたかて、おもろい遊びしたくてあのクラブに出入りしとるんちゃうか?」と聞く。
「せやなぁ。金持の道楽っての一度体験してみたかっただけやな。でも想像以上におもろなかったわ」
心は手を横に振り
「無理、無理。あんたには無理やわ。うちのこと“暴れ馬”言うたけど、あんたやって相当やよ?
あんな虫も殺せんような温室育ちのおぼっちゃんたち相手に、そろそろあんたが飽きてきたんちゃう?」
「せやな。お前の言うことは全部当たっとるだけに言い訳できひんな」
「しっかし、“津島”やて?何のジョークなん。ウケるんですけど!
もっとましな“偽名”あらへんかったの?」
心に言われて速人は窓の外の流れる景色を眺めながら勝気に口元に笑みを浮かべた。
「おもろいやろ?」



