椿紀と出会ったのは20年程前、僕たちが18歳のときだった。
ありがちだが、大学が同じだった、と言うことから始まった。
その日、僕は学食で昼食を済ませることにした。午後イチから講義がある。
だが、ランチタイム帯とだけあって学食は混み合っていた。A定食を買って、かろうじて見つけたテーブルを見つけ椅子に腰を降ろすと、そのすぐ後に僕の隣に腰掛けてきたのが椿紀だった。
隣に座られたことを特に不思議に思わなかった。それほど学食は混み合っていたのだ。
椿紀のトレーにはカレーライスが乗っていて
「すみません、隣いいですか……?」と遠慮がちに聞かれて「どーぞ」と僕はぶっきらぼうに答えた。
この頃の僕は人と距離を取るつもりもないが、だけど深く入り込むこともしなかった。友人は数人いたが、心を許していたわけではない。
「ふぅー、危うく食いっぱぐれるところだった」と椿紀が独り言を漏らし、席に落ち着くと僕のトレーを見て
「あ!それA定食?いーなー、私んときはもう売り切れてたんだよね」
と、親しげに話しかけられ
「良かったらどーぞ。まだ手をつけないから」と僕は定食が乗ったトレーを椿紀の元にスライドさせた。
「え…?え?でも大狼くんは…?」
と聞かれて、名前を認識されてるから、学部が一緒なのか……サークルは入ってないし、ゼミで見かけた顔じゃない。
「俺は大丈夫だから。悪いケド急ぐから」
と、早々と席を立ち
「待っ……!」と言う彼女の言葉を遮って僕は次の講義の為、構内の移動をはじめた。
別に、一食食べなかっただけで死にはしない。
その気になれば三日三晩抜いても大丈夫だ。
つまり、このときの僕はA定食を譲ったところで、大した意味を感じなかった。



